ネットの速度は3つの場所で決まっていた。回線・ルーター・Wi-Fiの仕組み全体図
ネットの体感速度は「①外の回線」「②家の入口」「③家の中」の3段リレーで決まります。そして遅さの原因の多くは、回線そのものではなく③家の中、つまりルーターのWi-Fi規格と置き場所にあります。
光回線を契約していても、最後の数メートルのWi-Fiが弱ければ体感は遅くなります。逆に言えば、3つの場所のどこが詰まっているかを切り分ければ、お金をかけずに改善できる余地が見えてきます。この記事では、速度を決める要素の全体図を順番に解説します。
①外の回線では何が速度を左右するのか
外の回線で効くのは「回線の種類」と「混雑」の2つです。
光回線には、NTTの設備を借りて提供される光コラボ(ドコモ光・ソフトバンク光など)と、auひかりやNURO光のような独自回線があります。独自回線は利用者が同じ設備に集中しにくく、混雑に強い傾向があります。ただし提供エリアが限られる点が弱点です。
契約時に見る「最大1Gbps」はベストエフォート、つまり「理論上の上限であって保証値ではない」という意味です。実際の速度は時間帯と設備の混み具合で変わります。
夜にだけ遅くなる場合は、回線の混雑が原因です。従来のPPPoE方式は、通信が「網終端装置」という関門に集中するため、利用者が増える夜21時前後に渋滞します。IPv6 IPoEはこの関門を通らない高速道路のような別ルートで、夜の混雑を回避できます。契約中のプロバイダがIPv6 IPoEに対応しているか、まず確認する価値があります。
②家の入口では何が効くのか
家の入口で効くのは「マンションの配線方式」と「ONU・ルーターの構成」です。
マンションでは、建物の共用部から各部屋までの配線方式で上限速度が決まります。光配線方式なら部屋まで光ファイバーが届きますが、VDSL方式は電話線を使うため最大100Mbps程度に制限されます。この場合、どんな高性能ルーターを買っても上限は超えられません。自分の部屋がどの方式かはマンションの配線方式の見分け方で確認できます。
ONUとは、光ファイバーで届いた光信号を、パソコンやルーターが扱えるデジタル信号に変換する装置のことです。回線事業者から貸与される機器で、利用者が自分で交換することはできません。
一方ルーターは、ONUから受け取った通信を複数の機器に振り分け、Wi-Fiの電波として飛ばす装置です。ONUと一体型の機種もありますが、役割は別物です。速度改善のために自分で手を入れられるのは、このルーター側になります。
③家の中では何が効くのか
家の中で効くのは「Wi-Fi規格の世代」「ルーターの置き場所」「有線接続の活用」の3つです。遅さの原因として最も多いのがこの層です。
Wi-Fiには世代があり、新しい規格ほど速く、同時接続に強くなります。
| 規格 | 登場時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| Wi-Fi 5 | 2013年 | 5GHz帯のみ高速化。現在も現役だが世代交代期 |
| Wi-Fi 6 | 2019年 | 複数台同時接続に強い。現在の標準 |
| Wi-Fi 6E | 2021年 | 6GHz帯が追加され、電波干渉に強い |
| Wi-Fi 7 | 2024年 | 最新規格。複数の帯域を束ねて通信できる |
注意点は、Wi-Fi 7の性能を出すにはスマホやPC側も対応している必要があることです。古いルーターを使い続けている場合、回線が速くてもWi-Fi 5世代の上限で頭打ちになります。
置き場所も電波に直結します。Wi-Fiの電波は壁・水・金属に弱いため、床置き・棚の奥・水槽や冷蔵庫の近くは避け、家の中央寄りで床から1〜2mの高さに置くのが基本です。
オンラインゲームやビデオ会議で安定性を求めるなら、LANケーブルでの有線接続が最も確実です。Wi-Fiの不安定さを根本から排除できます。
結局なにから手をつけるべきか
無料でできることから順に試すのが鉄則です。
- ルーターの置き場所を変える(無料):床置き・部屋の隅から、中央・高い位置へ移します。
- 重要な機器だけ有線接続にする(ケーブル代のみ):仕事用PCやゲーム機を優先します。
- IPv6 IPoEの対応状況を確認する(多くは無料):夜だけ遅いならここが本命です。
- ルーターを買い替える:5年以上前の機種ならWi-Fi 6以降への更新で改善が見込めます。
- 回線を見直す:VDSL方式の限界や回線自体の混雑が原因なら、乗り換えが解決策です。工事不要で使える選択肢はホームルーター3機種の違いで比較しています。
回線の乗り換えまで検討する段階なら、キャッシュバックや割引を含めた実質負担で比べることが重要です。実質料金シミュレーターで自分の条件に合った回線を確認できます。
この記事のまとめ
- 体感速度は「外の回線」「家の入口」「家の中」の3段で決まり、原因の多くは家の中にある
- 夜だけ遅いなら回線の混雑が原因で、IPv6 IPoEへの切り替えが有効
- マンションはVDSL方式だと最大100Mbps程度で頭打ちになる
- ルーターは自分で買い替え可能で、Wi-Fi 6以降が現在の標準
- 改善は「置き場所→有線→IPv6確認→ルーター買い替え→回線変更」の順で、無料の対策から試す
よくある質問
ネットが遅いとき、まず何を疑えばいいですか?
最初に疑うべきはルーターの置き場所とWi-Fi規格です。回線そのものより、家の中の電波環境が原因であるケースが多数を占めます。ルーターを床や棚の奥から家の中央・高い位置に移すだけで改善することがあります。それでも遅い場合に有線接続やルーターの買い替え、回線の見直しへ進むのが効率的です。
IPv6(IPoE)にすると本当に速くなりますか?
夜間の混雑による速度低下には効果があります。従来のPPPoE方式は網終端装置という関門に通信が集中し、利用者が増える夜に詰まりやすい構造です。IPv6 IPoEはこの関門を通らない別ルートを使うため、混雑の影響を受けにくくなります。ただし家の中のWi-Fiが原因の遅さには効きません。
ONUとルーターは何が違うのですか?
ONUは光ファイバーの光信号をデジタル信号に変換する装置で、回線事業者から貸与されます。ルーターは複数の機器をネットにつなぎ、Wi-Fiの電波を飛ばす装置です。ONUは交換できませんが、ルーターは自分で買い替えられます。速度改善のために自分で手を入れられるのはルーター側です。
Wi-Fi 7のルーターに買い替えれば速くなりますか?
条件次第です。Wi-Fi 7は2024年に登場した最新規格で、性能を発揮するにはスマホやPC側もWi-Fi 7対応である必要があります。手持ちの機器がWi-Fi 6までなら、Wi-Fi 6対応ルーターで十分な改善が見込めます。規格よりも先に、置き場所と回線側の契約内容を確認するのが先決です。